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 著名な作曲家であるベートーヴェンは晩年に耳を患った。

聴力を失いながらも彼はある種の悟りを開き、独特の境地に達して新たな

時代を築く。


(*゚ー゚)


 しぃは自分の部屋のピアノに向かって、鍵盤を叩いていた。

右手は義手だから事実上指一本としてしか使えない。

可能な限り左手でカバーしながら旋律を奏でる。


(*゚ー゚)「よぉし……よし、これなら……!!」


楽譜も自分の体に合うよう、既存のものをすべて書き換えた。

額に汗を浮かべて熱中している練習も、ふとしたことで途切れてしまう。


(*゚-゚)


溜め息をついて手を止める。

時々こんな気分になる。

あの人が刑務所で自殺したと聞いてから。

溜め込んだ抗鬱剤をありったけ飲んだのだと言う。

ドアがノックされ、しぃは顔を上げた。


(*゚∀゚)「よう。手紙が来たぜ」

(*゚ー゚)「ありがとう、お姉ちゃん」

(*゚∀゚)「あんま根詰めるなよ」

(*゚ー゚)「うん」


彼女が出て行くと、しぃは手紙を見た。

ピアノ教室の先生が送ってくれた発表会の写真、請求しておいたピアノの

パンフレット、テレビ局からドキュメンタリー番組のオファー。


(*;゚ー゚)(またこれかぁ)


非業のピアニスト少女というのは関心を集めるのか、一度テレビに出たら

他の局からも次々に来るようになった。

それらは横に除けておいて、残りの封筒に眼をやる。


(*゚ー゚)「?」


差出人の名がない。

だが中に一枚、写真が入っていた。

クーだ。

GパンにTシャツという格好で、どこかの裏路地を背に立っている。

過去のものではないことを証明する為か、昨日の日付の新聞を肩に

抱えるようにして持っていた。

笑ってしまうような気取ったポーズだ。

裏返すと短く文章が書かれている。


「わたしは自殺なんかしたんじゃない。

ましてや脱獄なんかでもないんだ。

詳しいことは言えないけど、とにかくわたしは今も生きてる。

あんたとの約束だから」


(*゚-゚)「……」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


ζ(゚ー゚*ζ「さて、次は噂の天才ピアニストです!」

(*゚ー゚)「こんにちは」

( ^ω^)「事故で右手と右足なくしてるんですお?」

(*゚ー゚)「はい。もうずっと前の事ですけど」

ζ(゚ー゚*ζ「義手と左手一本のみを使った独特の演奏方法は世界中で注目を

     集めてるんですよ!

     すごいですねぇ」


どこかの地方都市。

その片隅にある居酒屋の休憩室では、店員たちが開店時間までの暇潰しに

テレビを見ていた。


ξ ゚⊿゚)ξ「偉いわねぇ、この子。片方の腕と足ないんでしょ?」

(-_-)「ヤク中に轢かれたんだよな、確か」

( ´ー`)「俺CD買ったぜ」


そこに新入りが顔を出した。


川 ゚ -゚)「トイレ掃除終わりました」

(-_-)「お、ご苦労ご苦労」

ξ ゚⊿゚)ξ「一ヶ月間は新入りの仕事ってコトになってるからねー」

( ´ー`)「そうそう、新入り。お前この子知ってるか?」


新入りはテレビを見た。

しばらくの間視線を釘付けにしていたが、やがて肩をすくめる。


川 ゚ ー゚)「さあね」


そろそろ開店時間だ。

一同、腰を上げた。


ξ ゚⊿゚)ξ「よっしゃあ、今日も一日頑張りましょ!」

(-_-)( ´∀`)「うぃーす」


クーはしばらく部屋に残った。

テレビの中では少女がピアノの演奏を披露している。

どこか悲しみが染み込んだような旋律。

これは何て言う名前の曲だったかな?


ξ ゚⊿゚)ξ「新入りー、何やってんのー?」

川 ゚ -゚)「今行きます」


おっとっと、こんな事してる場合じゃない。

クーはテレビを消し、店内に向かった。


 ξ ゚⊿゚)ξ「勉強は進んでる?」
 
川 ゚ -゚)「ええ、そこそこ」

 ξ ゚ー゚)ξ「頑張るのよー、獣医なんて夢のある仕事じゃない」

川 ゚ ー゚)「ありがとう」




お金を稼いで、大学に入って、忘れかけてた夢を適えよう。

わたしは生きていく。

後悔しながら、傷つきながら、それでもわたしは生きていく。




 

おしまい

[エンディングC]
 

後書き→66へ


 

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