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饐えた臭いがする。

ついさっきまで感じていた腐敗した水に近い臭いだ。

蒸し暑いこの部屋には、その不快な臭気が満ちている。


川 ゚ -゚)(ここは……)


クーはベッドに仰向けになり、ぼんやりと天井を眺めていた。

風景はどこかぼんやりと歪んで見える。

眼に涙をためて物を見ているみたいに。

起き上がろうとしたが体がひどく不自由で力が入らない。

まるで他人の体の中にいるみたいだった。


川 ゚ -゚)(?)


クーはあたりを見回そうとした。

かろうじて首が動く範囲に見える光景は、いずれも楽しいものではなかった。

溜め込んだゴミや出しっぱなしの衣類だらけの汚い部屋。

住人の荒んだ心が垣間見える。


川 ゚ -゚)(誰かいる。あれは、誰だっけ)


汚い部屋の片隅に誰かがうずくまっている。

頭を抱えて俯き、軽く体を前後に揺すりながら。

床に向かって垂れた長い髪、青白い肌、長い手足。

見覚えのある姿だ。

何かがとにかく不快だったので、クーは彼女を呼ぼうとした。


川 ゚ -゚)(おい……おい!)


口が上手く動かない。

クーは必死に呼びかけを続けた。

呼びかけは途中から哀願に代わっていた。

クーは泣きながら彼女を呼んでいた。


川 ; -;)(こっちを見てよ、お願いだから……こっちを……)


うずくまっている女の体の揺すり方が少しずつ大きくなってゆく。

いかにも苛立たしげだ。

クーがそれでも呼び続けると、とうとう彼女は立ち上がった。

ドスドスと畳の床を踏み鳴らしてこっちにやってくる。


川 ; -;)(?)


自分を見下ろす彼女に、クーは得体の知れない恐怖を感じた。

自分は彼女を信じ切っている。

でも彼女は自分のことをまるで壊れた人形か何かのような眼で見ていた。

彼女は床に落ちていたクッションを拾い上げた。

腕の内側にブツブツした発疹のようなものがたくさん見える。


川 ; -;)(あれは……?)


注射器の跡だ。

だがあそこに見えるのは実はごく一部で、大半はもっと目立たない場所にある。

足とか掌とかだ。

……自分は何故、そんなことを知っているんだろう?

彼女はクッションを手にこちらを見下ろしている。


川 ; -;)


それが自分の顔に乱暴に押し付けられた。

泣き声と悲鳴が喉の奥へ押し込まれる。

クーは息がつまり何とかそれから逃れようともがいたが、相手の力はあまりにも

強大だった。

大して自分は木の葉のように無力だ。


川 ; -;)(やめて、やめて……やめて、やめて、やめて!!)


絶望が意識を覆い尽くして行く。

死ぬことへの恐怖はあったが、それをはるかに上回るのは悲しみだった。

体が胸から真っ二つに張り裂けそうな悲しみ。

裏切られたことへの。


川 ; -;)(やめて!!!)

川# - )「うるさい、うるさい、うるさい!!!」


クッションの向こうで四年前の自分の声がした。

クーは今、自分の子の視点であの日起きたことを見ていた。

死が体から熱を奪って行く。

断末魔すら上げられず、クーは死んだ。

自らの手によって。

 

 


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