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ある晴れた夏の日のこと。
しぃは自宅の庭の木陰で、テーブルについて書きものに熱中していた。
テーブルの上には楽譜と筆記用具が散乱し、手元には小さなオモチャの
ピアノが置いてある。
(*゚ー゚)「んーと……」
楽譜を書き直してはその都度、鍵盤を叩いて具合を確かめる。
時折首を傾げたり溜め息をついたりして、心から情熱を注いでいる様子だ。
彼女の片方の手は義手のため、楽譜を自分流に書き換えなければならない。
(*゚∀゚)「お疲れ。アイスティー持ってきたぜ。あと手紙」
(*゚ー゚)「あ、お姉ちゃん。ありがと」
盆に乗ったグラスと封筒をテーブルの上に置く。
封筒はほとんどが発表会や講演、テレビ出演の依頼だ。
非業のピアニストというのは人の関心を誘うらしい。
(*゚∀゚)「涼しいねえ、今日は……」
(*゚ー゚)「ほんとにね」
アイスティーに口を付けつつ、車椅子の車輪を掴んで方向を変える。
もたもたした動きに姉が手伝おうとしたが、しぃはそれをやんわり払い除けた。
(*゚ー゚)「大丈夫、自分で何でもできるよ」
(*゚∀゚)「そうか……ま、あんま無理すんなよ」
(*゚ー゚)「うん」
姉が行ってしまってからも、しばらく広い庭園の様子を見ていた。
時々こんな気分になる。
胸の中心に大きなレンガが入っているような重たい気分。
(*゚ー゚)(あの人が自殺したって聞いてからずっとだ……)
刑務所内で飲んだふりをして溜め込んでおいた抗鬱剤を一気飲みし、死んだのだという。
致死量に達していて同房の囚人が気づいた時にはすでに手遅れだったそうだ。
自分の人生をムチャクチャにした女だ。
今でも彼女に対する憎悪は隠しようがない。
(*゚ー゚)(でも……それでも……
それでもあの人は、死ぬほど後悔しているように見えた)
傍聴席で言ったあのセリフは?
“死刑にして下さい”って。
そりゃあ、自分の人生がどうしようもないから殺してくれって言うのは身勝手だ。
そこに反省みたいなものはない。
でも少なくとも彼女は苦しんでいた。
こちらの望みどおり、のた打ち回って絶望していた気がする。
そう考えるとやり切れないような思いもある。
(*゚ー゚)「ふぅ……」
溜め息をつく。
一陣の風が吹き抜け、庭の芝生と木の枝葉をざわめかせた。
顔を上げる。
通りと庭を隔てる鉄の柵のところに誰かがいた。
(*゚-゚)「!」
川 ゚ -゚)
彼女がいた。
変装のつもりか髪をばっさり切っている。
しぃは幻のような気がして眼をパチクリさせた。
呼吸が止まりそうになる。
川 ゚ -゚)「やあ。でっかい家だな。えーと……」
彼女は何かを言おうとしているが、言葉が見つからないらしい。
忙しなく組み合わせた指を動かしている。
しぃは夢現で車椅子をそちらへ向かわせた。
(*゚-゚)「生きてたんですか……」
川;゚ -゚)「ああ。でも聞いてくれ、脱獄したんじゃないんだ!
その……何て言ったらいいか、事情があって……」
(*゚-゚)「わかりました。信じます」
川 ゚ -゚)「えっ」
(*゚-゚)「それより何でわたしに会いに?」
川 ゚ -゚)「……」
この答が間違っているのか正しいのかわからない。
そんな調子で、クーは消え入りそうな声で言った。
川 ゚ -゚)「あんたは、わたしが死ぬのを許さないだろうと思ったから……」