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耳鳴りがする。
頭のはるか奥底から聞こえてくる、キーンという音。
クーは横になってそれをずっと聞いていた。
川 - )(私はこの音を知っている。何の音だっけ……)
これは、耳鳴りじゃない。
他人のものであったような気もするし、自分のものであったような気もする。
その音を手が届くほど近くに感じ、ようやく正体がわかろうかという瞬間、
クーは目を覚ました。
ク ー が 殺 人 ゲ ー ム に 参 加 す る よ う で す
目覚めると同時にクーは咳き込んだ。
汚水の臭気が肺に満ちている。
川 ゚ -゚)「ゲホッゲホッ、ガハッ……」
ベッドに手を当てて、砂が詰まってるみたいに重たい上半身を起こす。
それにしても硬いベッドだ。
川 ゚ -゚)(真っ暗だな。電気はどこだ……ん?)
彼女が身を横たえていたのはベッドではなかった。
コンクリートだ。
水色のペンキが塗られているが、長い年月に朽ち果ててところどころハゲている。
ここはどこだろう。
クーは立ち上がった。
最悪の気分だ。アルコール入りの泥水を腹一杯飲んだみたいに。
頭はふらつき、視界はぼやけている。
川 ゚ -゚)(どこだ、ここ……)
クーは足を引きずって壁らしきところまで行き、そこにもたれた。
彼女の肩くらいまでしかない壁だ。
上を見上げたが天井はない。ここはどうやら屋外らしい。
深呼吸すると再び汚水の臭いが肺に押し寄せて来る。
泥臭い、腐敗臭の混ざった空気だ。
川;゚ -゚)(オエッ。何だ、このニオイ? どっから来るんだ)
眼を瞬かせたり擦ったりしているうちに、ようやく自分の置かれている状況が
わかってきた。
どうやらクーは水の抜かれた古いプールにいるらしかった。
やたら広いプールだ。昔通ってた小学校のやつよりも大分広い。
クーは目を閉じ、自分に言い聞かせた。
川 ゚ -゚)「これはフラッシュバックだ。実際の私はふとんで寝てる」
右手で左腕の肘の内側にいっぱいある注射の跡をさする。
川 ゚ -゚)(妄想。夢。悪夢)
呪文のように自分の言葉にすがりながら、クーはまぶたを持ち上げた。
暗雲の被さった真っ黒な夜空が見えた。
川 ゚ -゚)(……)
どうしていいかわからなくなった。
急激に心細さが増してきて涙が出そうになる。
自分の体を両腕で抱いて途方にくれていると、突然、向こうでぱっと
明かりがついた。
テレビモニタが地面に置かれている。
恐る恐る近づくと画面に文字が表示された。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
これは贖罪のゲームである
クリア条件……目標地点への到達
敗北……君の死亡または夜明け(5:00)までに目標地点に到達できなかった場合
報酬……君の罪の免除
ヒント……ステージには“モンスター”が配置されている
“モンスター”は“銀の銃弾”でしか殺せない
まずは銃を取りにトイレに向かえ
フェンスには近づかない方がいい
現在時刻02:03:59
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
川 ゚ -゚)(???)
何の事だかさっぱりわからない。
いまだ現実がはるか遠いもののように感じられ、頬をつねっても痛みを
感じないような気すらした。
しかし五分、十分とその場に座り込んでいるうちに、納得できる部分も
あることに気付いた。
つまり、今自分がいる状況に、あながちまったく現実と接点がないわけじゃ
ないことを。
川 ゚ -゚)(『取引』ってこのことだったのか……?)
とにかく、このままじっとしているのがベストだとはとても思えない。
クーは意を決してプールの壁を這い上がった。
川 ゚ -゚)(廃墟だな。ウォーターパークかな……?)
プールと遊園地が一緒になったようなテーマパークで、今いるのが
野外プールのようだ。
周囲を流れるプールに囲まれて、その向こうに屋内プールの入っている
大きな建物が見える。
ただし、そのすべてが朽ちていた。
パネル張りの地面はひび割れ、その合間から雑草が伸び放題になっている。
監視員用の背の高い椅子やテーブル、得体の知れない錆びついた鉄材などが
あたりに散乱し、もはや在りし日を見いだせないほどに荒れ果てている。
全体に満ちる淀んだ空気は鼻にまとわりつくような、湿気た腐臭を放っていた。
川 ゚ -゚)(悪臭の原因がわかったな)
どこかで水が腐っているのだろう。
照明だけはところどころ生きているが(またはこの狂ったゲームの主催者が
直したのか?)この重く圧し掛かる闇に対抗するにはあまりにもか細い光だった。
近くに建物らしきものの影があるが、とりあえずどうする?